会社設立のメリット・デメリット(その3)

 会社を設立するメリットその3として、個人事業者よりも節税策としての経費計上が行いやすい点が挙げられます。
 たとえば、住居について借上社宅とすることによって、社宅家賃の50%~80%を会社の経費とできます。以下で具体的に見てみたいと思います。

 

1.会社が役員等の住居を借上社宅として家賃を経費にできる

 個人事業者の場合に、自宅兼事務所の家賃について事務所として使用している部分(面積按分)のみ経費とすることができますが、会社において自宅兼事務所として使用する場合には、事務所部分について個人事業者と同様に経費とできるだけでなく、自宅部分についても、借上社宅とすることによりその一部を会社の経費とすることができます。

 また、従業員の住居についてもその一部を会社の経費とすることができます。

 ただし、下記計算式で定められた金額以上の金額を役員、従業員に負担させていない場合には、その差額に相当する金額についてその役員、従業員に対する給与として課税されてしまうことがありますのでご注意ください。

(1)役員の場合
①一般住宅
次のいずれか高い方の金額
イ(その年度の家屋の固定資産税の課税標準額×12%(※)+その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×6%)×1/12
 ※木造以外の家屋の場合に10%

ロ 月額家賃×50%

 

②小規模住宅の場合
※小規模住宅とは、その家屋の床面積が132㎡(40坪)以下(木造以外の家屋は99㎡(30坪)以下)の住宅をいいます。

 なお、マンションなどのように2以上の世帯を収容している住宅については、1世帯としてそのマンションを使用する際の床面積全体によって判断します。そのため、専用部分だけでなく廊下、階段等の共用部分の面積も考慮する必要があります。

 そこで、共用部分については合理的な基準により按分し、専用部分および按分後の共用部分の面積合計により小規模住宅に該当するかどうか判断します。


下記で計算した金額以上
その年度の家屋の固定資産税の課税標準額×0.2%+12円×その家屋の総床面積(㎡)/3.3㎡+その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%

 

(2)従業員の場合
下記で計算した金額の50%以上

その年度の家屋の固定資産税の課税標準額×0.2%+12円×その家屋の総床面積(㎡)/3.3㎡+その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%

 

 なお、各計算式の中の固定資産税の課税標準額は、家屋等の所在する市区町村(東京都23区は都税事務所)に固定資産税評価証明書を申請して金額の確認をする必要がありますが、この申請は家屋等の所有者でなくても借家人の権利として借家人自ら申請することが可能です。


2.生命保険料について経費にできる

 個人事業者の場合、生命保険料を支払ったとしても、必要経費にはできず生命保険料控除といった所得控除(最高12万円)の適用を受けられるだけですが、会社の場合には、契約形態によってその全部もしくはその1/2を支払った年度において経費にすることができます。特に貯蓄性がほとんどない掛捨ての定期保険については、全額損金算入することができます。
 なお、節税商品として人気が高かったがん保険については、税務上の取り扱いが変更となり支払い時に全額損金に算入することが難しくなりましたので、これから新しくがん保険に加入予定の場合にはご注意ください。

 

3.各種規程に基づいた出張日当等について経費にできる

 会社の場合には、旅費規程を作成することによりその規程に基づく出張日当の支給ができたり、慶弔規程を作成することによりその規定に基づく見舞金や慶弔金、出産祝い金、結婚祝い金などの支給ができ、かつその金額が社会通念上に照らして相当な金額として認められる程度の金額であれば、支給を受けた者の給与扱いにもなりません。
 なお、この〝社会通念上″というのがあいまいな表現なのですが、言うなれば常識的な範囲内であればということです。
 たとえば、結婚祝い金であれば一般的には役員で20万円以内、従業員で10万円以内であれば給与扱いとはならないと考えられます。
 また、上記のように出張日当等を支給する場合には、社内規程はしっかりと作っておきましょう。その支払いが会社業務に必要な費用であるのかどうかの判断基準となるからです。規程がなかったとしても経費として認められないということはありませんが、支払いを受けた者に対する給与としてその者に所得税がかかってしまうことがあります。


4.減価償却費を任意に計上することができる

 個人事業者の場合、固定資産に関する減価償却費は強制計上とされています。
 したがって、たとえば、減価償却費を計上する前の事業所得(事業収入-必要経費)がプラスではあるけれども各種所得控除の合計額より小さかった場合、減価償却費を計上してもしなくても税金計算上影響はありません。つまり減価償却費に節税効果がないことになります。

 会社の場合には、減価償却費は任意に計上することができるとされています。
 法人税法では、会社が減価償却費を経理処理した場合のみ、法人税の計算上、償却限度額の範囲内で損金として認めますという規定になっているからです。
 ですから、会社の利益の大小によって減価償却費の計上金額の調整をすることが可能ということになります。
 しかし、減価償却費の調整を検討する際には、金融機関からの融資等を受けたい場合にマイナス評価となる可能性があり注意が必要です。
 減価償却費について任意に計上するということは、決算書上の利益の調整ができるということですから、会社の損益状況について正しく決算書に反映されていないとも言えるからです。

 したがって、節税効果だけでなく融資等の資金計画を考慮した場合には、減価償却についてはできる限り任意に計上せず、法令に則った減価償却費を計上をした方がよいと言えます。


5.退職金の支給をすることができる

 個人事業者は、事業主個人に対して退職金の支給をすることはできません。また、その事業の専従者である家族に対する退職金についても経費として認められていません。
 しかし、会社の場合には役員、従業員に対する退職金の支給が認められています。
 また、退職金は長年の勤続に対する功労金としての意味合いもあることから、給与と比べても税金計算上優遇されています。
 退職金の税金計算上のメリットは、退職所得控除額という控除が大きいことと、退職所得控除額を控除した上でさらに所得を1/2にできる点にあります。

 

【退職所得の計算方法】

退職所得=(退職金-退職所得控除額)×1/2

※退職所得控除額
 勤続年数が20年以下の場合・・・40万円×勤続年数(80万円未満の場合には80万円)
 勤続年数が20年を超える場合・・・800万円+70万円×(勤続年数-20年)
 なお、障害者になったことに直接基因して退職したと認められる場合には、上記方法により計算した金額に100万円を加算します。

 

 なお、平成24年度の税制改正により、勤続年数が5年以下の役員等が退職金を受け取った場合には、メリットの1つである「所得を1/2とする計算」が適用できなくなりましたのでご注意ください。

 


 会社を設立した場合には、上記のように個人事業者ではできなかった経費の計上ができるという点は大きなメリットの1つと言えます。会社設立を検討される場合には、判断基準の1つとしてみてください。

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