会社設立のメリット・デメリット(その5)

今回は、会社を設立するデメリットについて検討してみます。
会社を設立する場合には、その1からその4で書いてきたようなメリットだけではなくデメリットについても十分に考慮したうえで検討する必要があります。

1.赤字であっても税金(均等割)の支払いが必要です

 個人事業の場合には、事業所得(事業収入-必要経費等)に対して所得税、個人住民税および個人事業税が課税され、事業所得が赤字であった場合には課税されません。
 会社の場合には、課税所得(会計上の利益に一定の税務調整をした金額)に対して法人税、法人住民税および法人事業税が課税されます。そして、課税所得が赤字であった場合でも法人住民税のうちの「均等割」という税金が課税されます。
 この「均等割」の金額は、事業年度末時点における資本金等の額によって決められており、最低金額は7万円です。
 また、営業所、店舗等を複数の都道府県や市区町村に設けた場合には、それぞれの営業所、店舗等ごとに「均等割」が課税されますのでご注意ください。
 なお、個人住民税についても同じく「均等割(たとえば現在東京都は4,000円)」という税金がありますが、事業所得が赤字の場合、その他の所得との合計が一定額以下であるときには非課税となります。


2.設立費用や専門家への報酬等が増加します
 個人事業の場合には、事業を開始するにあたって税務署等への届出をすることで開始できますが、会社の場合には、税務署等への届出を行う前に設立登記手続きが必要です。その費用は自分で手続きする場合には20万円~24万円(別途会社印鑑の作成費用等)、司法書士等の専門家に依頼した場合にはプラスその依頼報酬がかかります。

 また、会社を設立した場合には、経理・税務手続きや社会保険手続き等が複雑となってきますので、できれば何らかの形で専門家の協力を得た方がよいでしょう。そのための報酬等が増えてしまうことをご留意ください。

 

3.社会保険への加入が強制されます

 個人事業の場合には、事業主は国民健康保険と国民年金に加入する形となります。

会社の場合には、事業主およびその従業員について、国民健康保険に代わるものとして社会保険の健康保険・介護保険に、国民年金に代わるものとして社会保険の厚生年金に原則強制的に加入することとなります。

 なお、個人事業の場合の従業員については、常時使用する人数が5人未満の場合には社会保険への加入義務はありませんが、5人以上となった場合には会社と同じように従業員について社会保険への加入が必要です。


 〝国民健康保険、国民年金”と〝社会保険の健康保険、厚生年金”、この最も大きな違いは保険料の支払方法とその金額です。

 国民健康保険、国民年金の場合、保険料は全額加入者本人が自己負担しますが、社会保険の健康保険、厚生年金では会社と加入者が折半して支払うため、会社負担分の資金支出(費用)が発生します。なお、どれくらい会社が負担するかですが、概算になりますが人件費の約13%ぐらいになります(従業員の個人負担分が約12%ぐらいで合計25%)。非常に大きいですよね。

 ただし、その保険料の支払いが大きい分、社会保険の健康保険、厚生年金は加入者にとっては優遇されています。
 たとえば、健康保険では「傷病手当金」「出産手当金」といった手当金がもらえ、厚生年金は、国民年金部分の「老齢基礎年金」にプラス「老齢厚生年金」を上乗せした年金を将来受け取ることができます。

 保険料の負担は増えてしまいますが、将来受け取れる年金が増えるということは、加入者(事業主および従業員)にとっては大きなメリットという風にとらえることもできます。

 したがって、社会保険に加入することのメリットと保険料の負担が大きいことのデメリットを双方認識しておくことが必要になります。


4.お金の制約が多くなります

 個人事業の場合には、事業用の資金は、あくまでも事業主個人の資金であり、生活費等の支出(事業主貸)をすることが自由にできます。
 しかし会社の場合には、事業用に支出した資金は資本として会社財産に組み入れられるため、一度組み入れた資金を自由に引き出したりなどはできないことになります。
 会社の場合には、役員報酬の支給を受けることにより、その支給された役員報酬から生活費等の支出をすることになります。
 役員報酬以外の個人的な支出を会社口座から行った場合には会社から役員へ貸付をした形(役員貸付金)での処理となり、役員から会社へ借入利息の支払いが必要となるなど、会社の資金と個人の資金とをしっかりと区別する必要があります。

 

5.交際費について費用(損金)算入に一定の制限があります

 個人事業の場合には、事業に関係する交際費の支出については全額必要経費に算入することができますが、会社の場合には一定の制限があります。
 資本金1億円以下の法人の場合、年間支出合計600万円まで、支出額の90%を費用(損金)にでき、600万円を超えた部分については全額費用(損金)にできません。
 また資本金が1億円超の法人については支出した交際費全額が費用(損金)となりません。

 なお、平成25年度の税制改正により、資本金1億円以下の法人に対する費用(損金)算入制度が変わる予定で、600万円の限度額が800万円に、そして800万円までであれば全額費用(損金)算入ができるようになります。
 年間800万円という金額は非常に大きいですから、ほとんどの対象法人は交際費について全額費用(損金)にできるようになるということです。

 

6.登記事項の変更には変更登記手続費用がかかる

 個人事業では事業を開始するにあたり登記手続きは必要ありませんが、会社の場合には上記2.でも触れましたが設立にあたり登記手続きが必要です。
 会社の登記事項証明書を見たことはありますでしょうか。
 会社の基本的な事項は基本的にはすべて登記事項となっています。

 具体的には
「商号」「本店」「公告をする方法」「会社設立の年月日」「目的」「発行可能株式総数」「発行済株式の総数並びに種類及び数」「資本金の額」「株式の譲渡制限に関する規定」「役員に関する事項」「取締役会設置会社に関する事項」「監査役設置会社に関する事項」「登記記録に関する事項」

などが登記事項になります。

 上記の登記事項に変更が生じた場合、たとえば本店を移転した、資本金の額が変更となった、役員が変更となった等があった場合、変更事項に関する登記手続きが必要となりそのための登録免許税という費用も発生します(たとえば本店移転登記には3万円必要です)。

 会社という組織形態にした場合、それだけしっかりとしていると言えますが、変更登記手続きおよびその費用がかかることについてご認識いただいておく必要があります。

 


 個人事業者が会社の設立を検討したり、起業してすぐに会社設立を検討する場合には、今まで見てきたようなメリット・デメリットをしっかりと考慮したうえで判断するようにしてみてください。

 最終的な判断で迷ったときには、お近くの税理士等の専門家にお気軽にお尋ねいただければと思います。

 

業務案内
税務顧問
起業支援
相続対策
よくあるご質問
料金表
税理士ノブのブログ
税理士ノブのfacebook